<ニュース概要>
シンガポールの会計・企業規制庁(ACRA)が2026年10月2日、監査人向けの実務ガイダンス第1号「Using Artificial Intelligence Responsibly」(全10頁)を公表しました。誠実性・職業的専門家としての判断・説明責任・透明性・データの機密性とセキュリティの5つを柱に、実際に起きた事例と「自問すべき問い」を並べています。肝は、監査調書(監査人の作業記録)は「AIが支援した出力がどうレビューされ、どう判断が加わり、結論がどう証拠で裏付けられたか」を示すべき、と書いた点です。使ったプロンプト、人のレビュー後の大きな修正、AIの提案を採用・却下した理由まで残してよい、としています。強制力のない指針ですが、AIの文書化について監査調書の中身まで踏み込んだ当局は、英国FRC(2025年6月)に続く2例目で、調書の水準まで降りたのはACRAが初めてです。

 

 

<あなたが明日からできること>
【バックオフィスはこう変わる】
監査法人が「AIの出力をどう確かめたか」を調書に残し始めると、その確認は監査を受ける会社側にも返ってきます。経理がAIで作った仕訳や資料について、「誰が、どこを見て、何を直し、なぜ採用したか」を聞かれる場面が増え、作業そのものより確認の記録を残す仕事のほうが重くなっていきます。

 

【バックオフィスが押さえるべきポイント】
大事なのは「人が最終承認しています」と言うことではなく、承認した事実を後から再現できることです。全部を人が見直すと、AIで浮いた時間がそのまま消えてしまいます。だからこそ、機械に任せる確認、AIに異常を拾わせる確認、人が判断する確認を分けて、人が見る場所を絞る設計が、効率と説明責任を両立させる近道になります。

 

【今日からの5分トライ】
いまAIを使っている経理業務を一つ選び、「AIが出した結果を、誰が・何を見て・どう直したか」が今どこかに残っているかを確かめてみてください。残っていなければ、その業務の名前をメモに書き出すだけで十分です。それが、監査で最初に聞かれる場所のリストになります。

 

【中長期でこうついていく道筋】
まずは監査で必ず見られる仕訳や決算資料から、「AIの出力・人の修正・採用の理由」を一枚に残す型を作り、次に月次の定型作業、さらに開示資料へと広げていくのが現実的です。国際基準(IAASB)の側も、AIの文書化についてのガイドを年内に固める予定なので、型を先に持っておいた会社ほど、基準が決まったときに慌てずに済みます。

 

 

<出典>
出典:Accounting and Corporate Regulatory Authority(ACRA)・2026年10月2日
https://www.acra.gov.sg/news-events/news-announcements/audit-practice-guidance-no-1-of-2026-using-artificial-intelligence-responsibly/

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