<直近2週間の動き>
【IAASB(国際監査・保証基準審議会)】

10月5日のeNewsで、AI特化の非権威的ガイド(基準ではない手引き)の日程を明記しました。「Guide 1, Common Conceptual Foundation is anticipated in November, subject to approval at our October 28, 2026 mid-quarter meeting.」——ガイド1は10月28日の会合で承認されれば11月に公表、です。10月14日には10月28日会合のアジェンダが掲載され、議題の1つ目が「Guide 1 (2nd Read and Approval)」でした。全4本シリーズで、シリーズ全体の承認目標は2027年6月です。

【IAASB Guide 1 の9月会合ドラフト】

その11月公表予定のガイドの9月版ドラフト(19頁)を読むと、方向がはっきり書かれています。¶2「The guides do not create new requirements」——新たな要求事項は作らない。¶11「…but do not establish separate documentation requirements for such tools.」——AIツール専用の文書化要求は作らない。¶28は、人の関与が有効かどうかを、関与する人の能力・時間・情報・権限という条件で語っています。全文を通じて “assertion”(アサーション)と “materiality”(重要性)の語は1回も出てきません。10月28日に承認される更新版で変わる可能性はありますが、IAASBは会合の約1週間前に更新版と変更点の説明を掲載するとしています。

【AICPA(米国公認会計士協会)】

10月13日、監査人向けのAIプラクティスエイド(実務の手引き)を公表しました。チーフオーディターは「Ultimately, the auditor remains responsible for the audit and the audit opinion.」——最終的に監査と監査意見の責任は監査人にある、と述べています。Accounting Todayの報道によれば、本文には「Determining whether the level of human involvement is appropriate involves consideration of the nature」と人の関与の水準を判断するよう求める記述があり、また監査でAIを使うことを契約書で開示する義務は職業基準上ない(法令・契約・事務所方針で必要になる場合はある)と整理しています。AIを使ったことの説明義務に職業団体が正面から触れたのは、これが初めてです。答えは「義務は課さない」でした。

【PCAOB(米国公開会社会計監視委員会)】

品質管理基準QC 1000のQ&Aに「QC 1000 does not prescribe specific documentation requirements for automated quality responses.」——自動化された品質対応について特定の文書化要求は定めない、と明記しています。AIに関するスタッフガイダンスは未発行のままです。

【日本公認会計士協会】

10月7日付でテクノロジー委員会研究文書第15号「デジタル監査証拠に関する研究文書」を公表し、同日付で監査基準報告書500研究文書第1号「電子的監査証拠に係る研究文書」を廃止しました。公表の告知ページにAIへの言及はありません。

【その他】

IAASBは10月8日にDigital Technology Catalogの第3版を公開しましたが、論点整理のカタログで要求事項ではありません。IAASBのISA 330/500/520改訂案のウェビナーは10月7日までに全4回が終わり、録画とスライドが公開されています(コメント期限は12月15日)。IESBA(国際会計士倫理基準審議会)は10月29日にボード会合があります。英FRC(財務報告評議会)のこの2週間の公表物は、いずれもAIとは関係のないものでした。

 

<あなたが明日からできること>
【バックオフィスはこう変わる】
この2週間で、当局・職業団体の立場がかなり具体的に読めるようになりました。「最終責任は人にある」とは繰り返し書く。ただし、AIのために新しい記録のルールは作らない。AIを使ったことの開示も義務にしない。何をどこまで確かめ、どう残せば足りるかは、各社・各事務所が自分で決める、という形です。

【バックオフィスが押さえるべきポイント】
11月のIAASBガイドに「ここまで見ればよい」という答えを期待しないでください。出るのは考え方の枠組みです。もう1つ、AICPAの手引きについては、AIでやった手続を別のAIでレビューしても、監査人の監督・レビュー責任は代わらないという趣旨だと報じられています。「AIで二重チェックしています」は説明になりません。

【今日からの5分トライ】
カレンダーに2つ入れてください。10月28日(IAASBの会合、ガイド1の承認)と10月29日(IESBAの会合)。11月にガイドが出たら、自社のAI利用ルールと並べて読む時間を30分押さえておくと、読み流さずに済みます。

【中長期でこうついていく道筋】
当局が書かない以上、答えは自分で書くしかありません。自社のAI利用について、何を機械に任せ、何を人が見て、見ないと決めた範囲の根拠は何かを、今から書き始めること。開示義務がないということは、聞かれたときに説明できる材料を自分で持っておくしかない、ということでもあります。ガイドが出てから書き始める会社と、運用の記録を持って読む会社とでは、読める深さが違います。

<出典>
出典:[IAASB eNews October 2026(2026/10/5)]
https://www.iaasb.org/news-events/2026-10/iaasb-enews-october-2026
出典:[IAASB 10月28日会合ページ]
https://www.iaasb.org/meetings/iaasb-mid-quarter-board-call-0
出典:[IAASB Guide 1 9月会合ドラフト(Agenda Item 2A)]
https://www.iaasb.org/_flysystem/azure-private/2026-08/20260914-Agenda-Item%202A_Guide_1_Common%20Conceptual%20Foundation.pdf
出典:[IAASB Digital Technology Catalog(2026/10/8)]
https://www.iaasb.org/news-events/2026-10/iaasb-launches-interactive-digital-technology-catalog
出典:[IAASB ISA 330・500・520改訂案]
https://www.iaasb.org/focus-areas/strengthening-risk-based-audit-framework-proposed-revisions-isa-330-isa-500-and-isa-520
出典:[AICPA(2026/10/13)]
https://www.aicpa-cima.com/news/article/aicpa-releases-guidance-to-help-auditors-address-the-use-of-ai-in-financial-reporting-and-auditing
出典:[Accounting Today(2026/10/14)]
https://www.accountingtoday.com/news/aicpa-releases-practice-guide-for-auditors-dealing-with-ai
出典:[PCAOB QC 1000 Questions and Answers]
https://pcaobus.org/oversight/standards/standard-setting-research-projects/quality-control/qc-1000-questions-and-answers
出典:[日本公認会計士協会 研究文書第15号(2026/10/13掲載)]
https://jicpa.or.jp/specialized_field/20261013oct.html
出典:[日本公認会計士協会 研究文書第1号の廃止(2026/10/13掲載)]
https://jicpa.or.jp/specialized_field/20261013tnb.html
出典:[IESBA 会合一覧]
https://www.ethicsboard.org/meetings

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