8つのツールを並べると、監査のどこにAIが使えるのかが一目で分かります。監査を受ける側も、これを地図にして、中長期でいま何をしておくかを考えるきっかけにしてください。

 

<ニュース概要>
PwCの米国法人が2026年10月13日、2026年12月期(2026年末)の期末監査で使っているAIツールのうち8つを、名前を挙げて公表しました。発信元はコンサル部門ではなく監査部門です。計画から統制テスト、実証手続、監査委員会への報告まで、監査の入口から出口にAIが入っています。今後はグローバルの監査プラットフォームに統合していくとしています。
なお、米国では上場企業の監査はPCAOB(公開会社会計監視委員会)の基準、非上場企業の監査はAICPA(米国公認会計士協会)の基準で行われ、ツールによって対象が分かれています。
◆上場・非上場の両方で使うと明記されているもの
・Advanced Control Testing(ACT):統制テストの証跡を読み、統制の特性を抜き出して初期の文書を作る
◆非上場の監査向けと明記されているもの
・Simplified Audit – Planning:前年度の知見を引き継ぎ、変更点と追加情報が要る所を洗い出して監査計画を作る
・Simplified Audit – Financial Statement Tie-out:財務諸表と注記の数字を、裏付け資料と照らして突合する
・Asset & Wealth Management Audit Innovation Hub:非上場の資産運用会社向けの個別手続(運用報酬のテスト等)
◆上場・非上場の区別が書かれていないもの
・Advanced Walkthrough Assistant:業務の流れの聞き取り(ウォークスルー)の準備・記録・フローチャート化
・Scoping & Risk Assistant(SARA):監査範囲とリスクの評価、アサーション(確かめるべき主張)の評価と根拠の文書化
・Simplified Audit – Execute:裏付け資料を読み、サンプリングの結果を証拠に遡れる形で下書きする
・Audit Committee Report Analyzer:監査委員会への報告の漏れや不整合のチェック
一方で、削減時間などの数字はなく、人のレビューは「すべての判断・結論・サインオフは専門家に残る」と書くにとどまっています。

 

<あなたが明日からできること>
【バックオフィスはこう変わる】
監査人が、計画・統制テスト・実証手続・開示の突合まで、AIで資料を速く大量に読むようになります。これまで見過ごされていた小さな不整合も指摘として上がりやすくなり、決算資料の「整い方」が、そのまま監査の進み方の差として出てくる可能性があります。

 

【バックオフィスが押さえるべきポイント】
8つのツールは、そのまま「経理側でもAIが効く場所」の一覧として読めます。計画のメモ、業務フロー図、統制の証跡、証憑との突合、注記の数字チェックは、監査人が使う前に会社側でもAIで先に済ませられる作業です。一方で、PwCも「人がどこまで見るか」はまだ書けていません。AIを入れるときは、人が何を確かめるかを一行で書けるようにしておくことが大切です。

 

【今日からの5分トライ】
8つのツール名の横に、自社で対応している作業(業務フロー図、統制の証跡の保管、注記と本表の突合など)と、その担当者名を1行ずつ書き出してみてください。空欄になったところが、監査人から最初に聞かれやすい場所であり、AIを先に当てる候補でもあります。

 

【中長期でこうついていく道筋】
この8つの並びを地図にして、決算・開示の工程を順にAIに寄せていくのが現実的です。まずは突合や証跡の整理といった確認作業から始め、次にフロー図や計画メモの下書き、最後にリスク評価の材料づくりへと広げます。そのたびに「AIの出力を誰がどこまで確かめたか」を記録に残しておけば、監査法人に説明できる形で年々AI化の範囲を広げていけます。

 

<出典>
出典:PwC US「How AI is transforming the end-to-end audit experience」(2026年10月13日)
https://pwc.com/us/en/about-us/newsroom/expanded-audit-ai-capabilities.html

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