結論から先に書きます。Excelの数字を調べさせるのは Copilot、その結果を人が読める形にするのは Gemini。この二本立てが、いまのところいちばん手数の少ない組み方でした。

 

以前、AIは一社に寄せず最低でも二刀流にしておくべきだ、と書きました。片方が止まったときに仕事まで止まるのは、経営上のリスクだからです。今回はその続きで、では二刀流にしたあと、二本をどう使い分けるのか、という話です。

 

先日、ある会社で予算の削減案を洗い出す作業をご一緒しました。使えるAIツールは、Gemini の有料版と Copilot の有料版の二本だけ。指示を出すとファイルを開いて最後まで作業してくれる委任遂行型のAIツールは、社内で承認されていません。条件としては、けっして恵まれていない状態です。

 

そして最初にぶつかった壁は、精度ではありませんでした。資料が山のようにできて、読めない。これです。AIを入れた会社からいちばんよく聞く不満も、精度ではなくこれではないでしょうか。返ってはくるのですが、量が多すぎて、合っているかどうかを人間が確かめられない。

 

以下、その詳しいやり方です。

 

1.なぜ、出力は重くなるのか

チャット型のAIツールは、聞かれたことに漏れなく答えるように振る舞います。予算の費目を渡して「どこが膨らんでいますか」と聞くと、膨らんでいる科目を全部、理由の候補も全部、並べて返してきます。人間の同僚なら「大きいのは三つですね」と言うところを、二十個そのまま出してきます。

聞き方を工夫すれば、ある程度は抑えられます。ただ、浅く出させれば読みやすくはなっても、使う意味がなくなります。深く出させたうえで、読める形に畳む。この二段構えが要るのだと思います。

 

2.調べる係 ― Copilot

まず Copilot に、実績と予算のデータを入れて、思い切り細かく分析させます。ここでは読みやすさを一切求めません。膨らんでいる費目、前年からの動き、繰り返し発生している費用と一時的な費用の区別まで、出せるだけ出させます。

Copilot を調べる側に置いたのには理由があります。Excel の中身をそのまま扱える点で、いまのところ手数が少ないからです。Gemini は Excel をそのまま読んでくれず、Googleスプレッドシートへの変換が要ります(この変換の話は別に一本書きましたので、そちらに譲ります)。ファイルが数十本あると、変換だけで午前中が終わります。

半年前に同じことを試したときより、Copilot の分析はかなり良くなっている印象でした。

 

3.人に読ませる係 ― Gemini

次に、Copilot の回答を全文コピーします。画面の端から端まで、全部です。量が多ければテキストファイルにしても構いません。

そのテキストを、Gemini 側の NotebookLM(現在の名称は Gemini Notebook)に「ソース」として貼り付けます。NotebookLM は渡した資料の範囲内だけで答えてくれるのが特徴です。ここで「スライドにしてください」「一枚のインフォグラフィックにしてください」「マインドマップにしてください」と頼みます。

すると、読み切れなかった分析が、十数枚のスライドや一枚の図に畳まれて出てきます。手を動かすのはコピーと貼り付けだけで、一分もかかりません。

なお、同じ資料を渡して同じことを両方に聞いてみたのですが、答えの中身にはほとんど差がありませんでした。差が出たのは見た目です。図やスライドの体裁は、Gemini 側が明らかにきれいでした。だから「賢いほうに寄せる」ではなく「役割を分ける」という組み方になります。

 

4.マインドマップが、思いのほか効きました

実際の流れとしては、まずスライドにして、話し合える形にしました。そのうえでマインドマップも作らせてみたのですが、これがよかったのです。

費目どうしの関係が線でつながって出てきます。人件費と外注費のように、本来は片方が増えれば片方が減るはずの関係が、実際には両方とも増えている、といった構図が目で見えるようになります。金額の一覧を眺めているだけでは、なかなかこうは気づけません。

削減案を、先入観なしにフラットに洗い出したいとき。この使い方はかなり向いているのではないかと考えています。

 

5.できなかったこと

正直に書いておきます。仕訳帳のような明細の大きいファイルは、容量の上限に当たって NotebookLM に入りませんでした。三か月ごとに分割する、PDFにする、といった手当てが要ります。

このあたりは二刀流でも解けません。委任遂行型のAIツールが要る場面は、確かにあります。

 

おわりに

委任遂行型が使えないことは、AI活用ができないことと同じとは言い切れません。二本あれば、片方に深く考えさせて、片方に畳ませる、という組み方ができます。二刀流は、止まったときの保険としてだけでなく、平時の分業としても効くようです。

明日できる確認を一つだけ。いま使っているAIツールの回答で、長すぎて読み飛ばしたものがあれば、それを消さずに全文コピーして、もう一方のAIツールに「これをスライドにしてください」と渡してみてください。捨てていた分析が、そのまま資料になるかもしれません。

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