AIを全社員に配る会社が増えてきました。当事務所では、公開されている情報から「Claudeを全社に導入した会社」の事例を集めています。その中で、法人向けのプランではなく、個人向けのプランを会社負担で全員に配っている例が出てきました。
今回はその事例を取り上げて、なぜ私がこの形のリスクは非常に高いと考えているのかを書いてみます。
1.事例:全員に個人向けの上位プランを会社負担で配布
malna株式会社は、東京・恵比寿のWebマーケティング支援とAI導入支援の会社です。代表の方が書かれたnote(2026年2月15日)によると、正社員5名、インターン等15名、業務委託10名の約30名の体制で、AIツールの費用はすべて会社負担とのことです。その中に、次の一文があります。
「Claude Maxプラン(月額$100〜相当)── 全社員が利用可能、会社負担」
記事を読むと、AIの活用自体はかなり進んでいます。外注していた作業を内製に切り替え、毎月の管理作業も自動化できたと書かれています。全員のパソコンの性能まで引き上げていて、会社として本気で取り組んでいることが伝わってきます。この姿勢そのものは、とても良いことだと思います。
気になるのは、配っているのが個人向けのプラン(Max)だという点です。
2.個人向けプランは、会社の契約ではありません
AnthropicのClaudeの規約は、個人向けと法人向けで分かれています。原文で確認すると、違いは次のとおりです。
・個人向け(Pro/Max) 契約は使う人個人とAnthropicの間。入力した内容を学習に使うことがあり、止めるには各自が設定で学習をオフにする必要がある
・法人向け(Team/Enterprise) 契約は会社とAnthropicの間。顧客のデータで学習しない旨が明記されている
つまり、会社がお金を払っていても、契約しているのは一人ひとりです。会社のお金で買った車を、社員個人の名義で登録しているような状態です。
個人の契約だと、会社の側では次のことができません。
・誰が使っているかを、会社の管理画面で一覧にする
・何を入力したかの記録を、会社が確認する
・会社のアカウントでのログインに限定する
・退職や契約終了のときに、会社の側で使えなくする
特にインターンや業務委託の方は、入れ替わりが早いのが普通です。契約が終わったあとも、その方の個人アカウントには、在籍中に入れた会社やお客様の情報が残ります。
3.業種的にリスクは低い、とは言い切れません
マーケティング支援の会社であれば、扱う情報の機密性はそれほど高くない、と考える方もいるかもしれません。ですが、マーケティング支援はお客様の売上や広告のデータ、これから出す企画を預かる仕事でもあります。
私は個人的に、この形のリスクは非常に高いと考えています。
そして、おそらく同じような会社は少なくないのではないかと思います。スピードを重視する小さな会社ほど、「まずは個人プランで全員に配る」という選び方になりやすいからです。実際、当事務所が確認できた範囲でも、同じように個人プランを全社で使っている例はほかにもありました。
4.最低限、仕組みとして考えておきたいこと
AIを安全に使うというと、使う人のリテラシー(気をつけて使うこと)の話になりがちです。それも大切ですが、それだけでは足りないと考えています。最低限、情報漏洩やセキュリティの面から、「仕組みとしてどうなっているか」を一度確認しておいた方がよいと思います。
1.契約は会社名義になっているか
個人プランではなく、Team/Enterpriseなどの法人向けプランにする。
2.社外の人も、会社の契約の中で使ってもらえているか
インターンや業務委託の方も法人プランのメンバーとして入れ、終了時に外す手順を決めておく。
3.切り替えるまでの間、学習オフを確認しているか
各自の設定を確認し、確認した日付を残しておく。
会社がお金を払っていることは、会社が管理していることとは言い切れません。
おわりに
中小企業がAIのセキュリティをどこまでやればよいのか。その落としどころについては、ある士業向けのコンソーシアムで書いています。士業向けの内容ですが、規模の近い中小企業の方にもそのまま当てはまる内容です。
ご興味があれば、当社ホームページのお問い合わせからご連絡ください。ご案内いたします。
出典:malna株式会社 代表 高橋氏のnote(2026年2月15日)https://note.com/malna_recruit/n/n26cbe3c14965 /Anthropic 個人向け利用規約・法人向け利用規約
ISAO国際公認会計士事務所 加藤 勲
管理部門のAI導入を、説明責任の設計から支援しています。
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