<直近1週間の動き>

【Crowe BGK】9月29日、カナダの275名・36パートナーの法人が、Fieldguideを変革パートナーに選んだと発表しました。Fieldguideと組んだ初のカナダ法人です。適用範囲は保証業務全般。マネージングパートナーのコメントは「a supplement – not a replacement – for the work the team already does well」、チームが既にうまくやっている仕事の代替ではなく補完として、です。
より印象的なのは保証部門リーダーの発言です。原文は「The assurance profession is changing, and so is the business model that has supported it for decades. The window to wait and see is closing, so we’ve made our bet on the future.」。保証業務の専門職は変わりつつあり、それを数十年支えてきたビジネスモデルも変わる。様子見の窓は閉じつつある。だから我々は未来に賭けた。
275名の法人が、これを実名でプレスリリースに出す。ここが日本との最大の違いです。

 

【Aprio × Fieldguide】8月5日、米国20位・3,400名超の法人が、Fieldguideと「co-build」すると発表しました。これが今回いちばん構造的に重要な案件です。Fieldguideの基盤の上に、Aprio自身の監査メソドロジー、エンゲージメント基準、AICPA・PCAOB・GAAS準拠のフレームワークを組み込んだ役割別のAIエージェントを共同開発し、Aprioの実務家自身がエージェントを構築・改良する。CEOの言葉は「By building AI around our own methodology…」、我々自身のメソドロジーを中心に据えてAIを構築する、です。
買うのでもなく、ゼロから作るのでもない。自分たちの方法論を持ち込んで、ベンダーの基盤に載せる。この第三のモードが2026年に増えています。Baker TillyはOde(Anthropic系)と、CliftonLarsonAllenはDigitsと、同じ形で組んでいます。

 

【Grant Thornton】

5月7日、「gtap」を立ち上げました。今回調べたなかで唯一の、完全自社開発の監査プラットフォームです。CEOの言葉は「This is not about layering technology onto yesterday’s audit. We’re building something entirely different.」。元はアイルランド法人が自国市場向けに開発したものを米国の技術チームが拡張した、というメンバーファーム間でのプロダクト輸出の形になっています。
7月14日には、Grant Thornton AdvisorsがFieldguideを基盤に自社ツール「CompliAI」を構築したと発表。6月3日には英国法人が、Anthropic社のClaudeを監査・税務・アドバイザリー・管理部門の全員に6月から8月で展開しました。5億ポンドの投資計画の一環です。CEOの言葉が示唆的です。「the best technology in the room is still the person sitting across the table」「Clients don’t pay for process; they pay for judgement.」、クライアントはプロセスに金を払わない、判断に払う。

 

【Cherry Bekaert】

6月3日、Fieldguideを戦略AIパートナーに選び、財務諸表監査・内部監査・SOCを単一のAIネイティブ基盤に統合しました。この発表で、人手不足が導入の理由として最も明確に語られています。Fieldguide CEOの言葉は「The talent math doesn’t get better. The operating model has to.」、人材の算数は好転しない、好転しなければならないのはオペレーティングモデルの方だ。記事はCPAパイプラインが17年ぶりの低水準にあることにも触れています。

 

【BDO】

9月29日、UiPathとの提携を拡大しました。内部統制領域、ITGCとITACのテストとモニタリングのAIエージェント化です。原文は「a path from point-in-time, labor-intensive control activities to a continuous, intelligent control environment」、一時点の労働集約的な統制活動から、継続的でインテリジェントな統制環境への道筋。AI生成のワークペーパーは専門家のレビュー手続を経る建て付けです。なおBDO USAは2025年5月に、5年で10億ドルのAI投資を表明しています。RSMも10億ドル規模の技術投資を表明し、1月8日に「Ask Luca」を自社の監査エコシステム内で立ち上げました。「human-in-the-loop principles」に基づく、と明記しています。

 

【その他】

Citrin Coopermanは5月19日にAI監査プラットフォームのTellenに出資し、7月13日にCasewareのAI対応DAS Suiteを3,600名規模で採用しました。この法人の語り口は独特で、AIを人材育成の文脈で語っています。「When professionals can better understand the reasoning behind audit procedures and conclusions, they build stronger technical knowledge and professional judgment.」、手続と結論の背後にある論理を理解できれば、技術的知識と職業的判断が強化される。
EisnerAmperは自社でAzure上に「EisnerAI Audit Design Agent」を開発し、年間18,000件の監査すべてに適用しています。Armaninoは4月14日にDataSnipperと戦略提携、Plante MoranはThomson ReutersのCoCounselを導入してユーザー数を450%拡大しました。LSL CPAsは180名・4拠点の事務所ですが、4月29日にFieldguideの全社導入を発表しています。マネージングパートナーの言葉は「We don’t see AI as an efficiency tool; we see it as a way to rethink the audit workflow.」。
一方、WithumとCohnReznickは、2026年のニュースを確認した範囲で、自法人の監査へのAIツール導入の発表が見当たりませんでした。Forvis Mazarsは10月1日の統合報告書で「AI戦略に投資した」と書いていますが、ベンダー名も監査への適用も明示していません。Moore Globalは7月から9月のニュースにAI監査関連がありませんでした。NexiaとPKF、HLBについては確認できていません。
そして日本への波及です。Grant Thornton(太陽)、Forvis Mazars(フォーヴィス マザーズ)、RSM(RSM清和)、Crowe(Crowe Japan)の日本サイトを確認しましたが、いずれもAI関連の記載がありませんでした。Crowe Japanのニュースは最新が2024年9月30日です。BDO Japan(三優)はニュース一覧が取得できず確認できていません。グローバル側のプレスリリースに日本メンバーファームへの波及が書かれていたものは、ゼロ件でした。

 

<あなたが明日からできること>

【バックオフィスはこう変わる】
海外の中堅監査法人は、どのベンダーと組んだかを実名と日付でプレスリリースに出します。275名のCrowe BGKも、180名のLSL CPAsも出します。Fieldguide1社だけで、4月から9月に9件の採用公表がありました。これは採用市場と顧客に対するシグナルとして機能しています。日本では、同じ規模の法人がこれをやっていません。公表の作法が違う、というだけのことかもしれませんが、少なくとも外から見ると差があります。

 

【バックオフィスが押さえるべきポイント】
ただし、海外が進んでいて日本が遅れている、という単純な話ではありません。今回調べた全法人・全ベンダーで、「AIの出力のうちレビュー不要な範囲」を定義した記述は一件もありませんでした。言い回しは「全段階で人的監督」「支援するが代替しない」「human-in-the-loop」「レビュー可能」の4つに収束します。最後の「reviewable」は「レビュー可能」であって「レビュー不要」ではない。差があるのはツール導入の速度と規模であって、線引きの話では海外も空白です。

 

【今日からの5分トライ】
自社の監査法人がグローバルネットワークに加盟しているなら、そのネットワークの本国サイトでAI関連のプレスリリースを検索してみてください。5分で終わります。本国で大規模な導入が発表されているのに日本法人のサイトに何もない、という状態が普通に見つかります。そのギャップがどれくらいかを知っておくと、来期以降の監査がいつ変わるかの見当がつきます。

 

【中長期でこうついていく道筋】
注目すべき構造が一つあります。Fieldguideは、自分で監査メソドロジーを作らず、各国の権威あるメソドロジー保有者と組んで自社プラットフォームに埋め込んでいます。英国のMercia、カナダのCPA Canada。この形だと、事務所は自分でメソドロジーをAI化する必要がなく、契約すれば国の標準手続がAIエージェント化された状態で手に入ります。日本でこれが起きるとしたら、日本公認会計士協会の実務指針がベンダーに取り込まれるときです。それが日本上陸の先行指標になります。いまは起きていません。

 

<出典>
出典:[Crowe BGK × Fieldguide(2026年9月29日)]
https://www.globenewswire.com/news-release/2026/09/29/3370904/0/en/crowe-bgk-selects-fieldguide-as-transformation-partner-modernizing-the-firm-through-agentic-ai.html
出典:[Aprio × Fieldguide co-build(2026年8月5日)]
https://www.prnewswire.com/news-releases/aprio-and-fieldguide-co-build-the-future-of-audit-with-agentic-ai-302843339.html
出典:[Grant Thornton gtap(2026年5月7日)]
https://www.grantthornton.com/insights/press-releases/2026/may/grant-thornton-launches-gtap-audit-transformation-us
出典:[Grant Thornton Advisors × Fieldguide(CompliAI、2026年7月14日)]
https://www.fieldguide.com/blog/grant-thornton-partnership-compliai
出典:[Grant Thornton UK × Anthropic Claude(2026年6月3日)]
https://www.internationalaccountingbulletin.com/news/grant-thornton-to-roll-out-anthropics-claude-for-uk-workforce/
出典:[Cherry Bekaert × Fieldguide(2026年6月3日)]
https://www.cbh.com/newsroom/cherry-bekaert-expands-ai-audit-with-fieldguide/
出典:[BDO × UiPath 提携拡大(2026年9月29日)]
https://finance.yahoo.com/technology/ai/articles/uipath-bdo-expand-partnership-build-123000972.html
出典:[BDO USA 10億ドルのAI投資(2025年5月29日)]
https://news.bloombergtax.com/financial-accounting/bdo-pledges-1-billion-to-leverage-ai-for-tax-audit-services
出典:[RSM US「Ask Luca」(2026年1月8日)]
https://www.prnewswire.com/news-releases/rsm-us-launches-ask-luca-expanding-ai-capabilities-in-the-audit-302656207.html
出典:[Citrin Cooperman × Caseware DAS Suite(2026年7月13日)]
https://www.globenewswire.com/news-release/2026/07/13/3326220/0/en/Citrin-Cooperman-Company-LLP-Adopts-AI-Enabled-DAS-Suite-Powered-by-Caseware-to-Advance-Audit-Quality-Professional-Development-and-Scalable-Growth.html
出典:[Citrin Cooperman → Tellen 出資(2026年5月19日)]
https://www.citybiz.co/article/848241/citrin-cooperman-invests-in-tellen-to-accelerate-ai-powered-audit-transformation/
出典:[EisnerAmper EisnerAI Audit Design Agent/Microsoft(2026年1月27日)]
https://www.microsoft.com/en/customers/story/26018-eisneramper-microsoft-foundry
出典:[Baker Tilly × Ode/Anthropic(2026年7月20日)]
https://finance.yahoo.com/technology/ai/articles/baker-tilly-ode-anthropic-launch-120000219.html
出典:[Armanino × DataSnipper(2026年4月14日)]
https://www.businesswire.com/news/home/20260414650267/en/Armanino-and-DataSnipper-Form-Strategic-Partnership-to-Advance-AI-Enabled-Internal-Audit-and-Risk-Advisory-Execution
出典:[LSL CPAs × Fieldguide(2026年4月29日)]
https://www.consulting.us/news/13312/lsl-cpas-picks-fieldguide-to-integrate-agentic-ai-into-audit-practice
出典:[CliftonLarsonAllen × Digits co-build(2026年7月20日)]
https://www.claconnect.com/en/media/2026/cla-announcing-initiative-to-cobuild-ainative-accounting-platform
出典:[Fieldguide シリーズC/International Accounting Bulletin(2026年2月)]
https://www.internationalaccountingbulletin.com/news/agentic-ai-audit-platform-fieldguide/

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