この記事で分からない用語や手順が出てきたら、その部分をそのままコピーしてClaude(AI)に貼って聞いてみてください。かみ砕いた説明や、国税庁などの公式ページのリンクまで出してくれます。詰まったら遠慮なくAIに“添付して質問”が、この記事の正しい使い方です。

 

■ このシリーズについて

私は公認会計士です。監査やCFO・コンサルの現場を経て、ここ数年はAIを日常業務に取り込み、管理部門(バックオフィス)の効率化をずっと実践してきました。その延長で今回、新しく作った自分のひとり法人の第1期申告を、AI(Claude)だけを相棒に、記帳から電子申告・納付まで“ぜんぶ自分で”やってみました。プロでも、初めてのソフトと電子申告では普通にハマります。むしろプロだからこそ「どこが本当の難所か」を実況できると思い、3回に分けて記録します。第1回は会計を締める(記帳)、第2回は申告書を締める(別表・添付)、第3回は電子申告で戦う(電子署名のトラブル実録)。

 

会計ソフトは今回freeeを使いましたが、やり方の芯は「AIと連携アプリを組んだりせず、ソフトや国税の画面をスクリーンショットで撮ってAIに貼るだけ」。特別な設定はゼロで、しかもこの方法は特定のソフトに依存しません。マネーフォワードでも弥生でも、画面を見せて聞く、で同じように進められます。会計ソフトは問わない、と思ってください。

 

【このシリーズが向く人/向かない人・前提条件】
向く人:小規模・ひとり法人/個人事業主で、費用を自分でやってみたい人。向かない人:取引が多く証憑が大量で、丸ごと専門家に任せたい人。前提として、代表者のマイナンバーカード、freee会計+freee申告の契約、簿記の基礎、そして費用の入口がある程度そろっている状態(本ケースは月次の立替請求Excel)があると、ぐっと楽になります。

 

■ 前提:このケースの構造

再現するときに前提がズレると意味がないので、最初に置いておきます。新しく作ったばかりの法人なので、支払いの大半は別の関係法人がいったん立替えています。毎月、その立替分が明細付きのExcelで請求として上がってくる。つまり「会社のその月の費用=立替請求のExcel明細」という、入口がきれいに1本化された状態です。このExcelの作り方自体(freeeでも作れます)は話が広がるので今回は割愛し、「月別に費用がExcelでまとまっているシンプルなケース」として読んでください。

 

■ 証憑(領収書)の扱い ― 正直な割り切り

本来の王道は「1つの仕訳に1枚ずつ領収書を紐付ける」こと。freeeなら仕訳ごとに領収書写真をアップロードして添付していきます。これが正しい。ただ、私は今回それをfreee上ではやっていません。1仕訳ごとのアップロードは数が増えると相当な手間だからです。代わりに、その月の領収書は全部写真に撮ってローカルに残し、仕訳番号と写真ファイルに同じ番号を振って、名前まで含めて「この仕訳にこの証憑」が後から必ず突合できる状態にしました。freeeの中には証憑を入れていないけれど、別建てのフォルダ+番号ルールで仕訳⇔証憑が1対1で追える、という運用です。ここは「本来はfreeeに添付が筋。今回は手間を理由にローカル番号管理で代替した」と割り切りとして率直に書いておきます。電子で受け取った請求書・領収書は電子のまま保存が義務(電子帳簿保存法の電子取引)なので、そこだけは外さないように。

 

■ AIをどう使ったか(この回のいちばん大事なところ)

記帳の入力で、AIがいちばん効きました。流れはこうです。

まず「freeeにどうやって入力するのが速いか」を調べ、手入力ではなくCSVインポート(1行1仕訳の取り込み)でいく、と決めました。次に、freeeのインポート画面とCSVの形式(どの列に何を入れるか)のスクリーンショットをAIに渡し、「この形式を全部読んで、取り込めるCSVの作り方を教えて」と聞く。最初は形式が合わずインポートで弾かれることもあったので、エラーの画面もそのまま貼って、何度か形式を直しました。

 

最終的にいちばん効いたのが、月次のExcel明細を渡して「1行1仕訳のCSVを全部作って」とAIに丸ごと作らせたことです。できあがったCSVをfreeeに取り込むだけなので、入力作業はごっそり省力化できました。つまり「月次Excel → AIで取り込み用CSV化 → freeeにインポート」という流れです。手で1件ずつ打つのに比べ、桁違いに速い。

 

■ 今後に向けてのワンポイント:ベンダー×勘定科目の“マスター”を育てる

ここが、来年以降もっと楽をするための一番のコツです。今回の立替明細のExcelには、すでに「この支出はこの費用(勘定科目)」という自分の分類が入っています。そして支出は、たいてい支払先(ベンダー)と紐づきます。◯◯というサブスクなら通信費、△△書店なら教育研修費、というように。

 

だったら、「このベンダーなら、この勘定科目・この税区分」という対応表(マスター)を一枚作って残しておく。そして月を追うごとに、新しいベンダーが出たら足して育てていく。次からはAIに「このマスターに従ってCSVを作って」と渡せるので、分類のブレが消え、CSV作成は一段と速く・正確になります。最初の1回は手間でも、2回目以降が劇的に楽になる“資産”です。AIは、判断の拠り所(マスター)を渡すほど使いやすくなる——これは記帳に限らず、AI活用ぜんぶに効く原則だと思います。

 

■ 次回への橋渡し

この回が終わると、手元には“全部の仕訳データ”が揃います。これが第2回の出発点です。第2回では、この仕訳データをそのままAIに渡して「税務調整が必要な項目は何? 国税庁のページを見て洗い出して」と聞くところから始めます。データがあるから、調整の検討も具体でできる、というわけです。

 

■ 第1回の教訓

・入口を1本化すると記帳は一気に楽になる(今回は月次の立替請求Excel)。
・入力はCSVインポートが速い。形式と画面をAIに見せ、取り込み用CSVを作らせると省力化できる。弾かれてもエラー画面を貼って直せばよい。
・証憑は「1仕訳1枚」が王道。やらないなら、仕訳番号と写真番号を一致させて“後から必ず突合できる”状態だけは死守する。電子で受け取った証憑は電子のまま保存。
・できあがった仕訳データが、次回(税務調整の検討)の出発点になる。
・「ベンダー×勘定科目」のマスターを作って育てると、次年度以降のAI記帳が速く・正確になる。AIは判断の拠り所を渡すほど使いやすくなる。
・この方法は会計ソフトを問わない(今回はfreee/画面を見せて聞くだけ)。