日経ビジネスの連載「新卒は必要か」全8回のうち、AIが直接絡む回を抜き出すと、「仕事の中身が変わる → 採用人数が減る → 選考自体がAIになる」という一本の因果が浮かび上がる。

 

第一の現場:仕事の中身が変わる。 経済産業省が2026年3月に公表した「2040年雇用構造推計(改訂版)」は、事務職で約440万人、大卒・院卒文系で約80万人の余剰という衝撃的な数字を示した。事務系の労働時間のうち約55%がAI・ロボットで代替される見通しで、全体では約200万人分の労働需要が圧縮される計算だ。これを受け伊藤忠商事は2025年4月、事務職を「ビジネスエキスパート(BX)」と改称し、経営の重要パートナーを担うプロ職として再定義した。長期育成を明確にする「オリジナル配属制度」や総合職への転換支援を整え、新卒は年約20人の採用を続ける。単に減らすのではなく「格上げ」で応える構えだ。

 

第二の現場:採用人数が減る。 日経ビジネスとリクルートマネジメントソリューションズが2026年2月に実施した人事担当者779人調査では、「社内でAI活用が進むと新卒採用人数は今より減る」に「あてはまる」10.9%、「どちらかといえばあてはまる」28.9%で合計約4割が肯定した。採用パターンも「新卒採用が多い」が現在38.3%から5年後は25.8%へ12.5ポイント減、一部職種でキャリア採用が多い企業は27.4%から32.6%へ増える見込み。AIを積極導入する企業では約9割が新卒戦略を見直し、約6割が人数削減に踏み切っているという相関も示された。AIは「いつかの話」ではなく、もう採用数を動かすドライバーになっている。

 

第三の現場:選考自体がAIになる。 ウエルシア薬局はPeopleXの対話型AI面接を導入。24時間365日受験できる標準化された進行と、AIの深掘り質問による見極め強化が狙いだ。一方、学生側には「人間でない相手に評価される不公平感」が残り、個人情報の学習利用、評価バイアス、不合格理由の説明責任などのリスクが指摘される。EUではAI採用を高リスクと位置づけ規制を強める動きもあり、企業側の効率化メリットと、学生側の納得感・公平性をどう両立させるかが次の焦点になる。
連載全体では「数から質へ」「ジョブ型化」という大きな潮流も描かれているが、AIはその加速装置に近い。仕事の中身、採用人数、選考プロセスのすべてを同時に押し、新卒一括採用という日本型慣行のあり方そのものを問い直し始めている。

 

Sources:
特集:問われる大量一括採用の意義
第3回 伊藤忠、事務職を再定義 「440万人余剰」時代に先手
第4回 「AIで新卒採用減」4割 人事担当779人アンケート
第5回 ウエルシアも導入のAI面接、企業は好感触も学生に抵抗感も